neichan’s blog

ネイマといいます。日本人です。

第二章 空が晴れるまで

 

6月の札幌は『初夏』という言葉が最適だ。

暑くもなく、寒くもなく、ただ気まぐれに振れ幅ある。そのため暑い日もあれば、寒い日もある。

 

 

 

つまり、中途半端な気候だ。

 

 

 

劇団四季を通り過ぎたあと、左前にテレビ塔が視界に入ったとき、同時に騒音が耳に入った。

 

なんだろう。

今日は外人が多いとは思っていたが、ここまで来ると人の量が半端じゃない。

テレビ塔の前は通行止めになっており、警備員が真っ黒なクラウンを運転している金の短髪の兄ちゃんを説得している。

 

黒の車は一番汚れる。

実は車はグレーなどが一番汚れない。

というより汚れが目立たない。

 

北海道は特に雪や虫が多く、車は汚れやすい。

黒い車をあそこまでピカピカに手入れしているということは、あの人は相当お金を持っている。というより、時間を持っている人だと感心している自分がいる。

 

 

 

あ、よさこいだ。

 

 

 

 

 

遠くに映るカラフルな装いですぐにわかる。

札幌に住んでいれば、ほぼ全員が認知している祭りだ。

 

そんなにメジャーなスポーツや行事ではないと思うが、恐ろしく人が集まることは知っている。

 

札幌市も半端じゃない数の苦情が寄せられているらしい。

 

もっとも、こんな300メートルも先にいる人間に聞こえているというのとは、近所で行われていたら、うるさくてしょうがない。

さらに通行止めを多く、ビジネスマンからしたら、人が多く、車も使えないとなると、邪魔以外の何者でもない。

 

しかし、それを押し切ってでもやる理由があるのだ。

 

 

 

 

 

 

それが金だ。

 

 

 

 

 

 

 

これだけ人が集まれば、イベントとしても注目される。

 

さらにそれを観に、海外からも人が来る。

テレビ放送もあり、すでに一大イベントとなっている。

 

 

この最も人が集まり、多くの苦情が来てでもやる理由はそれだ。

 

 

 

 

結局金か。。

 

 

 

 

 

そういえば、ネイマも言ってたな。

 

よさこいってめっちゃ面白いものでさ。

1年間かけて、1曲作るんだよ。

それを最後の2ヶ月とかは毎日10時間くらいかけて形にしていくんだ。

 

なんかスポーツだって感じるよ。

だって、甲子園目指す高校球児となにも変わらないよ。

1年間、いや、3年間死ぬほど努力して、上を目指すんだ。

お金が入るわけでもないし、時間もお金もめっちゃ費やすけど、この会場にくれば、

 

あーやってよかった。とか、

 

もっと出来た。とかいろいろ考えるんだよ。

 

 

最も難しいのは、審査の基準だよ。

 

 

明確な定義がない。心躍らせる演舞とか言われてるけど、正直どうだか分からんよ。

 

 

だって、テレビ放送もあって、こんだけ人が集まるイベントだよ。そりゃあー有名なチームが勝ち上がれば、それだけ人が集まるだろ?

 

紅白と同じだよ。

今年売れた人とかではなく、演歌の人とか毎年出ている人とかをキャスティングするだろ?

 

もちろん、色んな世代が楽しめるように。というコンセプトがあるのはわかるけど、明らかにそのグループ、今年活躍してないよね?って人も出るじゃん。

 

 

よさこいもそんなもんよ。

 

 

大人が決めるものは、すべてに理由がある。

俺らはそれを覆る瞬間が見たくてやっている部分もあるんだ。

たぶん出来ないと分かっているけど、やってやりたい。って気持ちが前に出ちゃうんだろうな。

 

 

 

 

懐かしいな。

俺もあいつの言葉に恐ろしく同情した。

 

 

 

俺は野球に命を懸けていた。

言葉の通り、本当に命を懸けていた

 

 

 

 

それが自分の実力以外で叶わなくなる辛さを誰よりも知っている。

 

 

 

人間は、自分の中心にあるものを失った瞬間に、本当に一度死んだようになる。

 

 

一度であればいい。思ったよりそれが長いのだ。

 

 

 

待ち合わせは分かりやすいように、テレビ塔前と言ったが、近くに来ると想像よりも大きいものだ。

 

また、前とはどこを指すのだろうか。

テレビ塔内の案内所の前か、少し先にある、ベンチか。

迷った末に、テレビ塔の4本足の2丁目側の南側の足付近にある、自販機の前で待つことにした。

 

 

 

 

 

『俺はね。

毎年、札幌から釧路に帰ってから、1週間はなにも出来なくなるんだ。』

 

 

『頭の中では分かってるんだ。

落ち込んでる暇があったら練習しろっ!ってね。

でもね。落ち込んでいるわけじゃ無いんだよ。』

 

『自分の全てを捧げたものが打ち砕かれたあとは、何をすればいいか分からないんだ。』

 

『なにを食べたいか、誰といたいか、なにを目的に生きていけばいいか。』

 

 

『全てわからなくなるんだ。』

 

『幸い、俺にはまた来年があるって、どっかで吹っ切れるけど。』

 

 

『それが無い人は、なにで埋められるんだろうな。』

 

 

 

 

君が言っていたことは、本当だよ、ネイマ。

 

 

本当になにをすれば良いか分からなくなる。

 

 

 

俺は本当になにをすればいいか分からなかった。

 

 

 

大人という生き物全部が嫌いになった。

他人を信じることが恐ろしくなった。

自分に対する自信もなくなった。

 

 

その後、その埋め合わせをするかのように、

ギャンブルはハマっていった。

 

 

特にやりたいとか、勝つために!とかそんな気持ちはなかった。

 

 

ただ、一瞬でも感情が動くことをしたかっただけなのだ。

 

少しでも、なにも考えずに時間を過ぎたかった

だけなのだ。

 

 

 

 

そう。この人に逢うまでは。

 

 

 

『よおぉ!そらっ!元気そうだな!!』

 

 

彼が僕の人生のみちしるべ。

大嶋圭介さんだ。

 

 

続く